国際ロマンス詐欺は、近年横行するSNS型ロマンス詐欺の一種です。
加害者はSNSを利用し、写真を使って架空の外国人を演じ、被害者に恋愛感情を抱かせ、金銭をだまし取るのです。被害者は経済的にも精神的にも大きなダメージを負います。
見知らぬ外国人からメッセージが送られてきたら、実在の人物であるかどうかを画像検索を利用して見破るのがおすすめです。
この記事では、国際ロマンス詐欺の特徴や、相手の画像を利用して詐欺を見破る方法などを解説します。
国際ロマンス詐欺はSNSを利用した恋愛詐欺

国際ロマンス詐欺とは、SNSを利用した恋愛詐欺の一種です。
架空の外国人を演じる人物が、SNSを通じて知り合った相手に恋愛感情を抱かせ、金銭をだまし取ります。例えば、加害者(詐欺師)は、出会い系サイトやアプリで、偽の人物像を使ってターゲットに近づき、やりとりを重ね、恋愛関係や親近感を抱かせます。
そして、頃合いをみて「あなたに会うための旅費が必要だから送ってほしい」などの理由でで送金を促します。いったん送金してしまうと、さらに理由をつけて送金を求めてくるため、そのやりとりを何度も繰り返すうちに、気が付けば多額のお金を失っているのです。
警察庁の発表によると、令和6年におけるSNS型ロマンス詐欺の被害額は約400億円と、前年と比べて約2倍も増加しています。(※1)
国際ロマンス詐欺の拠点は海外にあることも多く、一般的に金銭の取り返しは困難です。怪しいと思ったら、送金せずに周囲や専門機関に相談しましょう。
SNSで知り合った、会ったこともない人物に送金をするのは非常に危険であることを覚えておきましょう。
国際ロマンス詐欺の特徴

国際ロマンス詐欺の特徴は、外国人を語る詐欺師が、SNSを通じて、被害者と直接会うことなく金銭をだまし取ることです。
ほかのSNS型ロマンス詐欺との大きな違いは、加害者が外国人であることでしょう。加害者は素敵な写真、経歴、優しい言葉で被害者を魅了し、巧妙な手口で金銭を振り込ませます。
外国人を語る詐欺師が加害者
国際ロマンス詐欺では、外国人を語る詐欺師が加害者です。
次のような架空の経歴が使われます。
- 軍医
- 軍人
- 国連
例えば、紛争地で軍医などをしていると嘘をつき、「あなたに会うため」などという言葉で渡航費用として金銭を振り込ませるのです。
次のような手順で被害へと誘導されます。
- SNSやアプリでやり取りが始まる
- LINEでのやり取りを持ちかけられる(より親密に)
- 恋愛感情を抱かせるメッセージがまめに送られてくる
- なんらかの口実で金銭の振り込みを勧められる
- 複数回にわたって金銭を無心される
- 会う約束をしても理由をつけて会えない
- 連絡がとれなくなる
最初はインスタ、フェイスブック、マッチングアプリで出会いますが、より親密になるためにLINEでのやり取りに誘導されるパターンが多く、あとは恋愛感情を抱かせるメッセージが送られてくるようになります。
外国人であればストレートな愛の言葉も不自然ではないため、ターゲットも夢見心地になりやすい傾向にあります。
被害者の年齢は、男性は50〜60歳代、女性は40〜50歳代が多く、孤独な人がターゲットになりやすいようです。
金銭要求の手口
国際ロマンス詐欺による金銭要求の手口を紹介します。
加害者は、恋愛感情を抱かせてから、次のような理由で金銭を振り込むよう誘導してくるでしょう。
- 「あなたに会うために日本へ行きたい。旅費を立て替えてほしい」
- 「2人の将来のために投資をしてお金を増やそう」
- 「あなたの国で暮らしたい。今の仕事を辞めるためには違約金が必要」
- 「日本へ向かう途中で警察に拘束されてしまった。保釈金が必要」
- 「家族が病気で手術費用が必要」
- 「荷物を送るための手数料を送金してほしい」
客観的に考えれば、このような金銭の要求を不審に思わない方がおかしいと思う人もいるでしょう。しかし、楽しい会話を重ねて信頼関係を築き、恋愛感情が生まれた後では、信じたい気持ちが優先してしまうのかもしれません。
複数回にわたり金銭を振り込んでも、被害者は「⚪︎⚪︎が幸せならそれでいい」と、だまされていることになかなか気がつかないのです。
国際ロマンス詐欺を画像で見破る方法
「国際ロマンス詐欺かもしれない」
SNSのやり取りをしながらそう感じたら、相手の写真を利用して見破る方法があります。次に紹介する方法で確認してみましょう。
プロフィール写真を画像検索してみる
国際ロマンス詐欺では、魅力的な別人の写真をインターネット上から転用し、実在の人物であるかのように見せかけることがあります。
そこで、まずは相手の写真を画像検索してみましょう。ほかから転用した別人の写真である場合、詐欺の可能性が高いでしょう。プロフィール画像に限らず、相手が送ってくれた顔写真の画像も同様に検索することがポイントです。
インターネット上では、他人の写真を拝借して素性を偽ることは簡単です。国際ロマンス詐欺にだまされないためには、相手が架空の人物である可能性を考え、まずは画像を調べることをおすすめします。
また、画像検索をしてみて、たとえ実在する人物であったとしても、サイトやアカウントをよく調べて、居住地などを偽っている場合には、やはり怪しいと疑ってみましょう。
国際ロマンス詐欺に特徴的なプロフィール画像

国際ロマンス詐欺では、信頼して恋愛感情を抱いてもらうために、ターゲットにとって魅力的な画像が使われます。
イケメン・美女
ターゲットに恋愛感情を抱かせるため、イケメンや美女の顔写真が使われる傾向があります。モデルのような美男美女が、優しく甘いメッセージを送ってきたら「怪しい」と思う方が安全です。
顔が分からない画像
プロフィール画像で顔が写っていない写真を使っている場合も要注意です。顔が分からないように加工して、男性の筋肉や女性の胸のラインを強調した姿で関心を引くのも、よくある手口でしょう。
やけに高画質
詐欺師は自分の写真と偽って、フリー画像を使用することもあります。
フリー画像の場合、高画質できれいな写真が多いのが特徴です。素人では撮影できないような色鮮やかで解像度が高い写真は、フリー画像の可能性があります。
肌の露出が多い
特に男性をターゲットにする場合、肌の露出が多い写真を使うことがあります。
冷静な思考力を低下させるために、グラビア画像を転用することもあるでしょう。水着姿や胸元が大きく開いた服装の美女が言い寄ってきたら要注意です。
お金持ちアピール
高収入の異性を魅力的に感じる人も少なくありません。そのため、医師や投資家を名乗り、お金持ちアピールをした写真が使われることもあります。
ハイブランドの服飾品や、高級車を写り込ませている写真も怪しいと疑ってみることが大切です。
プロフィール写真を画像検索する手順

それでは、プロフィール画像や送られてきた顔写真をインターネットで画像検索する手順を紹介します。
準備として、画像はPCやスマホにダウンロードして保存しておきましょう。
Google Chrom(iPhone/Android)の場合
Google Chromeは、iPhoneとAndroidの両方で利用できます。
- Google Chromeのホーム画面にアクセスする
- Googleレンズのアイコン(カメラのアイコン)をタップする
- 「写真を選択」のアイコンをタップする
- フォトライブラリから検索したい画像のアクセスを許可する
- 検索したい画像をタップする
PC(ブラウザ)の場合
PCなら簡単に画像検索できます。
- Google Chromeのホーム画面にアクセスする
- Googleレンズのアイコンをタップする
- 画像をアップロードする
- 検索する
国際ロマンス詐欺の可能性大!3つのポイント

画像検索をして、インターネット上で同じ写真が抽出された場合、国際ロマンス詐欺であるかどうか見破るための3つのポイントを紹介します。
別人とリンクする写真である
画像検索で同じ写真がヒットした場合、誰にリンクしている写真なのかを調べましょう。
- 名前
- 出身地
- 生年月日
- 経歴
写真が同じで上記が全くの別人であるアカウントが存在した場合、検索で見つけたアカウントか、やり取りしている人物のアカウントかの、どちらかが偽物である可能性が高いでしょう。アカウントが作られた時期を確認し、最近できた方のアカウントに注意が必要です。
フリー画像である
画像検索してみて、写真がフリー画像やモデルの写真であった場合、国際ロマンス詐欺の可能性があります。イケメンや美女のフリー画像を使って、別人になりすますのです。
また、この場合、たとえ金銭目的の詐欺ではなかったとしても、フリー画像で自分を偽っている人物であるため、信用しないのが賢明でしょう。
プロフィールが一致しない
画像検索をして、本人と思われる情報とヒットした場合、画像が掲載されているサイトやアカウントのプロフィールをよくチェックしましょう。
やり取りしているのが架空の人物ではなかったとしても、居住地などを偽っている場合にはここで分かる可能性があります。
プロフ写真が画像検索でヒットしないときの対処法
顔写真が画像検索でヒットしない場合もあります。怪しい情報が出てこないからといって、詐欺師ではないとすぐに判断してはいけません。詐欺師が慎重である場合には、画像検索にヒットしない画像を選んでいる可能性もあるからです。
画像検索でヒットしない場合には次の方法を試してみましょう。
プロフィールの内容をネット検索する

やり取りしている相手の名前やプロフィールの内容をネット検索してみましょう。相手の情報が見つかることがあります。また、InstagramやFacebookなどのSNSでも、アカウントを検索してみましょう。
情報を見つけた場合には、投稿内容やフォローしている人物なども徹底的にチェックして、実在の人物であるかどうか調べます。
ほかの画像を送ってもらう
「あなたのほかの写真も見たいから送ってほしい」とお願いしてみましょう。もし、相手が本当に自分の顔写真を使っているのであれば、ほかの写真を送るのは簡単です。
しかし、別人の画像を利用したなりすましの人物であった場合、同じ顔の別の写真を送ることは難しいでしょう。なんだかんだと理由をつけて送ってこない場合は怪しいと判断できます。
また、送ってもらった場合も、その画像を画像検索してさらに調べることが可能です。
絶対に送金しない
画像がヒットしなかった場合も、絶対に送金しないようにしましょう。国際ロマンス詐欺の被害に遭いたくないのであれば、お金を振り込まないことが大切です。投資の話も断るようにしましょう。
詐欺のターゲットになっていると分かった時の対処法
つらいことですが、国際ロマンス詐欺のターゲットになっていることが判明してしまうこともあります。1人でなんとかしようとせず、冷静に対処しましょう。
国民生活センターなどの専門家に相談する

自分だけで相手と対峙せず、専門機関に相談しましょう。国民生活センターや警察であれば、被害を防ぐ方法や、今後の行動についてアドバイスしてくれるでしょう。
次の連絡先を参考にしてみてください。
機関名 | 連絡先 |
---|---|
国民生活センター 越境消費者センター ご相談受付 | https://www.ccj.kokusen.go.jp/sdn_process |
警察相談専用窓口 | #9110 |
消費者ホットライン | 188 |
二度とお金は支払わない
国際ロマンス詐欺では、複数回にわたって金銭を要求してきます。もしも、すでに金銭の支払いをしている場合、どんなに無心されても二度と支払わないようにしましょう。
【事例】よくある国際ロマンス詐欺のパターン
国際ロマンス詐欺の事例を紹介します。
ありがちなパターンを認識しておくと、実際に詐欺に遭いそうになったときに「怪しい」と気がつけるでしょう。
女性軍人・軍医のふりをして「日本に移住したい」と語る
被害者:男性(70代)
相手:自称アメリカ人女性・軍医(40歳)
被害金額:未然に防がれる
被害者の男性は、自称40歳のアメリカ人軍医の女性と知り合い、輸送費名目で148万円ほどを振り込むよう求められました。女性はイラクで勤務していて、退役したら日本に移住すると語っていたようです。

昼夜を問わず戦場で働いている



あなたの街に来て、新しい生活を始めたい
そんなメッセージを送られ、男性は「困っているので助けてあげたい」と思うようになり、金銭を振り込むために銀行へ向かいました。
この男性のケースの場合、幸い詐欺を疑った銀行窓口の職員が通報し、金銭被害は未然に防がれました。(※2)
台湾美女からの投資話
被害者:男性(会社員/51歳)
相手:自称台湾人女性
被害金額:1,000万円以上
被害者男性のSNSアカウントを、ある日台湾人女性がフォローしました。
女性は、美しい自分の顔写真を送ってアプローチを始めます。写真の女性は、白い肌に大きな瞳と長い髪が印象的な中華美女で、ピンクのキャミソール姿も男性の関心を惹くには十分です。
しかし、男性にはすでに交際相手がいたため、その旨を女性に伝えました。すると女性は、次のように答えたのです。



それでもいい。友だちでも十分です
いじらしい態度にほだされてしまった男性は、女性から暗号資産の投資に勧誘され、アプリをインストールし、1千万円以上をつぎこんでしまいました。
アプリは偽物で、画面上で見えていた利益は見せかけだったことが判明します。(※3)
韓国人男性から「2人の将来のために投資をしよう」
被害者:女性/30代
相手:自称韓国人男性・経営者
被害金額:500万円以上
被害者である30代女性は、マッチングアプリで自称経営者の韓国人男性と知り合いました。女性はこの男性から無料通信アプリに誘導され、次第に親密になります。



妻、baby
男性はこう語りかけ、女性に好意を匂わせます。日本人男性なら口にしない甘い呼びかけや情熱的な言葉は、女性を夢見心地にさせていったのでしょう。
そしてある日、次のような名目で、男性が紹介する投資サイトの投資に勧誘されました。



2人の将来のため
女性は少額の投資から始め、最終的には消費者金融などから約500万円を借りて投資することとなりました。
女性が出金について相談したところ、男性の連絡は途絶えたのです。(※4)
見知らぬ外国人からのメッセージは画像をチェック!国際ロマンス詐欺を未然に防ごう
国際ロマンス詐欺が恐ろしいのは、恋愛感情が入ってしまうため、冷静な判断力を失い、被害を認識できなくなってしまうことです。
見知らぬ外国人からメッセージがきたら、安易にやり取りをせずに、必ず画像をチェックして実在の人物かどうかを確認しましょう。
直接会ったこともない人から金銭を要求されることは間違いなく異常な事態です。専門機関に相談して、できることなら被害を未然に防ぎましょう。
(※1)警察庁「令和 6 年に おけ る特 殊詐 欺及 びS NS 型 投資 ・ロ マン ス詐 欺の
認 知 ・ 検 挙 状 況 等 に つ い て ( 確 定 値 版 )」p10
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2024.pdf
(※2)朝日新聞「女性軍医名乗り「あなたの街で生活したい」 ロマンス詐欺の手口は」
(※3)産経新聞「「だまされてもいい…」出会いはSNS 拡大するロマンス詐欺の被害者心理」
https://www.sankei.com/article/20231115-OVCXG2G33RIMLDQIE52STE7FXA/
(※4)讀賣新聞オンライン「国際ロマンス投資詐欺に注意…被害が急増、実態は不明