ストーカーとはつきまとい行為や待ち伏せ、位置情報の無断取得などで特定の相手を嫌がらせする行為です。これらの行為はストーカー規制法で規制されているものの、なかには法に反してまで行う人もいます。万が一、ストーカー被害にあってしまった場合、対処法を把握しておくことが大切です。
この記事ではストーカーの心理や被害にあった場合の対処法などを解説します。
ストーカーの心理

ストーカー被害の対処法を把握するうえでは、なぜストーカー行為をするのか、心理を把握しておくことも大切です。
ストーカー行為をしてしまう人の心理として以下が挙げられます。
- 相手と親密になりたい
- 自分の要求が通ると思っている
- 相手に強い憎悪を抱いている
- 自分が拒絶されていることが分からない
相手と親密になりたい
ストーカーの中には、好意的な感情が強くなりすぎた結果、歪んだ形で相手に接近しようとするケースがあります。例えば、車に傷をつけて気を惹こうと考えるなど、本来であれば逆効果となる行動を取ることがあります。
一般的に他人とコミュニケーションを取る際、礼儀や常識をわきまえるものの、ストーカーは自分の欲求を優先し、相手の迷惑や恐怖を無視して行動してしまいます。「車が傷つけば相手が気づいてくれるはずだ」という一方的な思い込みによって、イタズラがエスカレートすることもあるので注意が必要です。
自分の要求が通ると思っている
ストーカーが相手につきまといを繰り返してしまうのは、次のような認知の歪みの可能性が考えられます。
- 自分の要求はきっと通る
- 強引にでも押し通せば受け入れてもらえる
例えば相手が嫌がっているシチュエーションであっても、「これくらいなら大丈夫」「怒っているけど本音は違うだろう」という勝手な期待を抱き、常識や法律を無視して近づこうとするのです。
相手に強い憎悪を抱いている
ストーカー行為は、好きだから近づきたいという感情だけではなく、相手に対する憎悪や報復心によって行われる場合もあります。たとえば、交際していた相手に振られた、仕事上のトラブルで恨みを持っている、といったケースです。
このような憎悪型のストーカーは、被害者を苦しめること自体が目的になることがあります。例えば、無言電話を何度も繰り返す、SNSで誹謗中傷を続ける、荷物を勝手に送りつける、さらにエスカレートして自宅や勤務先に押しかけるなど、多面的な嫌がらせを行うリスクがあるでしょう。嫌がらせをして相手を追い込んでやりたいという心理が強いため、非常に危険な状況に発展しやすいのが特徴です。
自分が拒絶されていることが分からない
ストーカー行為を続けてしまう理由のひとつに、本人が拒絶されたことを理解できていないという点が挙げられます。
被害者は明確な拒否の意志を示しているにもかかわらず、ストーカー側は照れているだけと都合よく解釈し続けるのです。また、拒絶されている現実に気付かず、よりアピールしようという発想へと移行します。実際には拒絶されているにもかかわらず、その事実を認められない状態が続くと、つきまとい行為や待ち伏せなどが長期化し、被害者の心身を追い詰めていきます。
ストーカーに対処する際のNG行動
ストーカー被害にあっている場合、次のような行動を取るのは避けましょう。
- 冷たく接する
- 過剰な反応をする
- SNSでストーカー被害を発信する
- 家族や友人に協力を依頼する
- 連絡先を急に変更する
- すぐに警察に通報する
冷たく接する
ストーカーが連絡をしてきた際、強い拒絶感から冷たくあしらいたくなる気持ちが沸くのは自然なことです。しかし、過剰に冷淡な態度を取るとストーカーを刺激し、行動がよりエスカレートする可能性があります。
友好的に接する必要はありませんが、むやみに怒りや敵意をむき出しにするのは危険です。加害者が「もっと強いアクションを起こせば振り向いてくれるかもしれない」と勘違いするリスクがあります。
また、ストーカーによっては、傷つくことへの恐怖や怒りから報復心が芽生え、被害が激化するケースもあり得ます。適度な距離感を保ちつつ、感情をあまり見せず、冷静かつ事務的に対処する方が安全です。
過剰な反応をする

ストーカーは相手の反応を求めて行動していることが多いです。もし自分が強い恐怖心を露わにしたり、激昂したり、SNSなどで大騒ぎしたりすると、加害者は手応えがあると判断しかねません。その結果、ストーカーはますますエスカレートし、被害が深刻化する可能性があります。
過剰に反応すると、自分に興味があるからだという思い込みを与えてしまいます。そのため、ストーカー対策では、できるだけ淡々とした対応が求められるでしょう。
SNSでストーカー被害を発信する
ストーカー被害にあっている場合、怖い思いをしていることを周囲に知ってほしい、助けてほしいという切実な思いからSNSで状況を発信したくなるかもしれません。しかし、SNSは加害者も簡単に閲覧できる可能性があるメディアです。自分が投稿した情報をもとに、行動パターンや居場所、心理状態などを加害者が把握し、対策を練ることも考えられます。
また、被害の詳細をSNSで公表することで、加害者は自分がさらに注目されていると感じ、自己顕示欲や支配欲を刺激するリスクがあります。ストーカー対策として状況を第三者に伝えるのは大切ですが、SNSなどの不特定多数が見る場ではなく、警察や探偵、弁護士といった専門家や信頼できる少数の知人に相談するのが基本です。
家族や友人に協力を依頼する
一人では怖いという理由から、家族や友人に助けを求めるのは自然な行動です。しかし、過剰に協力を依頼しすぎると、かえって事態をこじらせることもあります。例えば家族や知人が加害者に直接連絡を取ったり、対決姿勢を見せたりした場合、ストーカーは被害者を取り巻く人までも敵と認識し、さらなる反発心や攻撃性を燃やす可能性があるのです。
信頼できる人に状況を共有しておく場合は、家族や友人には不用意に相手と接触しない、無闇に相手を刺激しないなどのルールを設定し、警察や専門家と連携しながら慎重に動きましょう。
連絡先を急に変更する
ストーカーからの連絡が煩わしい、恐ろしいからといって、急に電話番号やSNSアカウントを変更してしまうのは危険です。ストーカーがブロックされた、拒絶されたと感じて逆上を招く可能性があるからです。変更後の連絡先を探ろうと躍起になったり、さらにエスカレートした行動を取ることさえ考えられます。
ストーカーとの連絡手段を断つ行為は、証拠収集の上でも得策ではありません。警察に被害を相談する際、相手からの連絡内容が証拠として使える場合があります。何も考えずに連絡手段を断ってしまうと、その証拠を失ってしまう恐れもあるため、専門家の助言を得たうえで慎重に判断する必要があります。
すぐに警察に通報する
ストーカー被害を受けたあと、すぐに警察に通報しようとする人もいます。できるだけ迅速に対応するほうが良いと思うかもしれませんが、タイミングや状況を誤ると危険を伴うこともあるため、通報のタイミングには注意が必要です。ストーカーが警察沙汰になったことを知ったとき、逆上して暴力的な行為に及ぶケースもあるのです。
もちろん、命や身体の安全が脅かされている緊急時には、ためらわず通報しましょう。一方、そうでない場合は、証拠を集めながら探偵や弁護士に相談し、警察へ届け出るタイミングや方法を検討するほうがトラブルを最小限に抑えられるでしょう。
警察に相談する

上述のとおり、警察へは適切なタイミングで相談しましょう。警察に相談した場合、次のようなステップで進んでいきます。
- 被害を届け出る
- 警告を申し出る
- 禁止命令を申し出る
- 援助を申し出る
被害を届け出る
まずは、ストーカー行為を受けている事実を警察に報告することが重要です。この段階では、警察は相談として受理し、被害者がどのような意向を抱えているかを確認しましょう。
被害者が特に措置を望んでいなければ、相手への防犯指導程度でおさまります。一方、被害者の処罰感情が強い場合やストーカーから危害を加えられる可能性が高いと判断された場合、事件化することもあります。
警告を申し出る
ストーカー規制法では、警察署長がストーカー加害者に警告を発することが認められています。警告を受けたにも関わらず、つきまとい行為を続けると法的処罰の対象になり得ます。
警告は加害者に対して明確な注意喚起を行うもので、強制力はありません。しかし、警告によりストーカーが行動を自制し、事態が収まるケースもあります。逆に、警告を受けたことで逆上し、かえって嫌がらせや暴力行為が激化するリスクも否定できません。
警察と相談しつつ、状況を見極めながら申し出るかどうかを判断する必要があります。
禁止命令を申し出る
警察に相談することで、都道府県の公安委員会が禁止命令を出すことができます。禁止命令は法的拘束力があり、禁止命令等に違反してストーカー行為をすると、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される可能性があります。(※1)単なる警告と比べて格段に強い効力を持ち、加害者に対して「これ以上のつきまといは犯罪行為である」という強いメッセージを伝えることができます。
なお、令和4年度に発出された禁止命令は1,744件と過去最多でした。一方、警告の数は1,868件と前年度を下回っています。これは、ストーカー規制法の改正によって、警告を経ずに緊急禁止命令が発出できるようになったためと考えられます。(※2)
援助を申し出る
ストーカー行為が深刻化している場合、警察への援助申し出が可能です。援助の主な内容は次のとおりです。
- 被害防止交渉における支援
- ストーカーの氏名等の教示
- 被害防止交渉のための助言等
特に一人暮らしの女性のように、防犯対策を講じるのが難しいケースでは、警察の支援が大きな助けとなるでしょう。
ただし、すべての地域や警察署が同じような手厚い援助を実施できるわけではありません。警察内部の人員や対応可能な範囲には限界があるため、あらかじめ相談員や担当官と密にコミュニケーションを取りつつ、具体的に何をどこまで援助してもらえるのか確認することが重要です。
警察以外の相談先
ストーカー被害にあっている場合、警察以外にも次のような場所に相談可能です。
- NPO法人
- 民間の警備会社
NPO法人

女性支援やDV被害者支援など、さまざまな分野のNPO法人が、ストーカー被害に対応するプログラムや相談窓口を設けていることがあります。心理的ケアや具体的な防犯アドバイス、弁護士の紹介など、幅広い支援を受けられる場合があるため、まずは近隣やオンラインで探してみると良いでしょう。
NPO法人によっては、一時的に住む場所を提供している団体もあります。特に経済的に苦しい状況にある場合には、こうしたNPOの制度を利用することで大きな安心感を得られるでしょう。
民間の警備会社
自宅や職場周辺、あるいは通勤・通学路などで、ストーカーが出没する頻度が高い場合、民間の警備会社と契約して警備を強化してもらう方法があります。専門家による巡回や監視カメラの設置、防犯装置の導入などを依頼すれば、ストーカーが近づくこと自体を抑止できる可能性があります。
ただし、警備サービスの内容や費用は会社によって異なります。見積もりを複数社から取り、サービスの詳細を比較検討することが必要です。また、警備会社によっては、証拠収集を専門家と連携しながらサポートしてくれるところもあるため、ストーカー被害の法的対応を視野に入れている場合は、その点も相談時に確認すると良いでしょう。
ストーカー被害の証拠収集も重要

ストーカー被害にあっている場合、証拠収集も重要です。例えば警察に被害を報告する際も証拠を提出すれば、警察もスムーズな判断が可能になります。
ストーカー被害の証拠は自力で収集できるものの、加害者とバッティングしてさらなる被害につながりかねません。そのため、探偵に依頼して次のような証拠を収集しましょう。
- メール・SNS・手紙などの記録
- 電話や会話の録音
さらに、証拠を集めるためには、防犯カメラやドライブレコーダーの導入、日記やメモの作成も有効です。
ストーカーは適切な対処法で被害を抑えよう
ストーカー行為をしてしまう人は相手と親密になりたい、自分の要求が通ると思っている、相手に強い憎悪を抱いているといった心理状況にあります。
ストーカー被害にあっているのであれば、相手に冷たく接する、過剰な反応をする、SNSでストーカー被害を発信するといった行動は避けましょう。また、証拠を収集しておくことも大切です。証拠を集めておけば、警察も行動しやすくなるでしょう。
アイヴィ・サービスはストーカー被害解決に欠かせない証拠収集に対応しています。依頼者のプライバシーに配慮したうえで証拠を集めるので、ストーカー被害にお悩みの方はご相談ください。
(※1)内閣府男女共同参画局「ストーカー行為等の規制等に関する法律」
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/law/06.html
(※2)警察庁「令和4年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応
状況について」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/stalker/R4_STDVRPCAkouhousiryou.pdf