前科や前歴があるかどうかは結婚や採用にあたって重要な情報ですが、個人情報保護の観点から、他人の前科を調べることは非常に難しいでしょう。しかし、調査方法によっては、対象者の素行や経歴・前歴を調べることは可能です。
この記事では、前科と前歴、犯罪歴との違いや前科の調べ方などを解説します。
前科とは
前科とは、刑事裁判において有罪判決を受け、法的な刑罰を科された経歴を指します。具体的な刑罰には、懲役、禁固、罰金、執行猶予付きの判決などがあります。これらの前科は、裁判所や検察庁によって公式に記録され、公的な記録として残ります。
前科があることで、就職や海外渡航、資格取得などに影響を及ぼす場合があり、社会生活においてさまざまな制約が生じることがあります。例えば、次のような職業は就業に必要な資格を取得できません。(※1)(※2)
- 税理士
- 教師
前科の経歴は生涯消えることはありません。犯歴事務規定によると、検察庁が保管している前科情報は、犯歴係事務官が該当者が死亡したことを知ってから削除するように定められています。(※3)
前科の経歴は消えなかったとしても、前科の効力が消えることはあります。前科の効力が消えれば、資格が取得できなかった職業であっても、資格を取得したうえで就業可能です。
(※1)e-GoV法令検索「税理士法」第四条五号(欠格条項)
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237/20240101_431AC0000000003#Mp-Ch_1-At_4
(※2)e-GoV法令検索「学校教育法」第九条
(※3)法務省「犯歴事務規程(昭和 59年4月26日法務 省刑 総訓 第329号 )第十八条
前歴・犯罪歴との違い
前科と似た言葉として前歴、犯罪歴があります。このうち、前歴とは、警察や検察による捜査の過程で、逮捕や取調べ、送検などの手続きを受けた履歴を指しますが、有罪判決を受けていない場合も含まれます。例えば、容疑者として逮捕されたが、不起訴となった場合や、嫌疑不十分で釈放された場合でも、前歴として記録されることがあります。
一方、犯罪歴は、広義には前科や前歴を含め、その人が関与した全ての犯罪や疑いに関する記録を指します。つまり、前科は有罪判決を受けた正式な記録、前歴は捜査段階の履歴、犯罪歴はそれらを総合したものと考えることができます。
前歴調査が行われる場面
特定の人にどのような前歴や前科があるかをチェックするのが前歴調査です。例えば従業員の採用時や恋人との婚約時に前歴調査が行われます。
採用時
企業や組織が新たに従業員を採用する際、応募者の信頼性や適性を確認するために前歴調査を行うことがあります。特に、金融業、教育、医療、警備などの業種では、高い倫理観や法令遵守が求められるため、前科や前歴の有無が重要な判断材料となります。
しかし、過度な調査や不適切な情報収集は、個人情報保護法や労働関連法に抵触する可能性があり、違法行為となり得ます。そのため、企業は法令を遵守し、適切な範囲内で情報を収集しなければなりません。
婚約時
結婚は人生の大きな決断であり、相手の過去や人柄について深く知りたいと考える人も多いでしょう。前歴調査を行うことで、相手の過去の問題行為や経歴を確認し、将来のリスクを減らすことができます。
しかし、無断で調査を行うことは、プライバシーの侵害や信頼関係の破壊につながる可能性があります。また、得られた情報が誤解や偏見を生むこともあるため、探偵事務所など調査の専門家に相談し、適切な手続きを踏むことが重要です。
前歴調査をするメリット
前歴調査を実施するメリットは次のとおりです。
- 採用のミスマッチを防げる
- 結婚前に不安な点を払拭できる
採用ミスマッチを防げる
求職者を採用する際に前歴調査を行うことで、採用ミスマッチを防止可能です。自社が求めるスキルを持っている従業員であるかどうかを前歴調査で把握すれば、ミスマッチを防げます。採用のミスマッチが発生すると従業員のモチベーション低下、早期離職などのリスクがあるため、採用者にとって前歴調査は欠かせない調査といっていいでしょう。
前歴調査による採用ミスマッチ防止は、モチベーション低下や早期離職を回避するだけではありません。求職者を見極めきれなかったことによる採用後の不祥事やトラブルも防止できます。
採用ミスマッチによる早期離職は大きな痛手
企業が従業員を採用するには多くの費用が必要です。採用に関わる従業員のコストはもちろん、求人媒体への出稿料なども発生します。早期離職されてしまうと、採用コストがすべて無駄になるだけでなく、再度採用するための費用がかさんでしまいます。
採用にかかるコストを無駄にしないためにも、前歴調査によって雇用リスクを最小限に抑えることが大切です。
結婚前に不安な点を払拭できる
結婚生活を円滑に進めるためには、相手への信頼が不可欠です。前歴調査を行うことで、相手の過去の問題行為や債務状況などを把握し、将来的なトラブルを避けることができます。これにより、安心して新たな生活を始めることができ、お互いの理解と信頼を深めることができます。
なかには独身だと思って交際していたにも関わらず、実際は既婚者だったというケースもあります。このような交際相手に騙されないためにも、結婚前の前歴調査は有効です。
前歴を調査する方法
前歴や前科を調査する方法は主に次の3つです。
- 報道機関の情報
- ネット検索
- 聞き込み
報道機関の情報
新聞、雑誌、テレビニュースなどの報道機関は、公的な事件や裁判の情報を公開しています。これらの情報源を利用することで、過去の重大な犯罪や社会的に影響の大きい事件に関する情報を得ることができます。ただし、報道されていない事件や個人情報に関する詳細な情報は得られない場合が多く、情報の入手には限界があります。
ネット検索
インターネット上の検索エンジンを利用して、特定の人物に関する情報を収集する方法です。SNSやブログ、ニュースサイトなど、多様な情報源から過去の活動や発言を確認できます。しかし、ネット上の情報は匿名性が高く、誤情報やデマが含まれている可能性があります。また、名誉毀損やプライバシー侵害に該当する情報も存在するため、情報の取り扱いには十分な注意が必要です。
聞き込み
相手の家族、友人、同僚など、周囲の人々から直接情報を収集する方法です。この方法では、相手の人柄や生活状況について深い情報を得ることができますが、プライバシーの侵害や人間関係のトラブルを引き起こすリスクがあります。また、聞き込みによって得られた情報が主観的であったり、偏ったものである可能性もあるため、客観性と信頼性の判断が重要です。
探偵にも依頼できる
前歴調査を自分で進めることも可能ですが、情報収集には限界があります。自分だけでは集められる情報に限界があると感じた場合は、プロの探偵に依頼しましょう。より詳細で信頼性の高い情報を得ることができます。
探偵に前歴調査を依頼するメリット
探偵に前歴調査を依頼するメリットは主に次のとおりです。
- 本来の業務に注力できる
- 独自のルートからの情報を収集できる
- 調査対象者にバレにくい
- 法律に抵触するリスクが少ない
- 反社会的勢力との関係もチェックできる
本来の業務に注力できる
探偵に前歴調査を依頼するメリットとして、本来の業務に注力できるという点が挙げられます。探偵に依頼せず、自社の従業員で前歴調査をしていると、本来の業務に注力できずに支障をきたしてしまう可能性があります。また、前歴調査をしたとしても、理想の成果が出るとは限りません。
一方、探偵に依頼すれば、自社の従業員のリソースを割かずに済むでしょう。さらに、自社で調査するよりも高精度の調査結果が期待できます。
独自のルートからの情報を収集できる
プロの探偵は、一般的にはアクセスが難しい情報源やネットワークを活用して、詳細かつ信頼性の高い情報を収集します。これには、専門的なデータベースへのアクセス、公共記録の精査、関係者への聞き取り調査などが含まれます。独自のルートを持つことで、表面的には見えないリスクや隠れた背景を明らかにし、対象者の実態を把握することが可能となります。
調査対象者にバレにくい
企業の担当者らが情報収集を試みると、相手に不審を抱かれたり、調査の意図を察知されるリスクがあります。探偵は高度な技術と経験を持ち、尾行や張り込み、聞き込みなどの専門的な手法を駆使して、対象者に気付かれずに情報を収集します。これにより、関係性を損なうことなく、必要な情報を得ることができます。
法律に抵触するリスクが少ない
個人での情報収集は、知らず知らずのうちに法律を侵す可能性があります。探偵は探偵業法や個人情報保護法などの関連法規を熟知しており、法的に許容される範囲内で調査を行います。これにより、法的なトラブルを避け、安全かつ確実に情報を入手することが可能です。
反社会的勢力との関係もチェックできる
反社会的勢力との関係は、ビジネスや個人生活において重大なリスクとなり得ます。探偵は、対象者が過去や現在において反社会的勢力と関わりがないかを徹底的に調査します。これには、過去の犯罪歴や交友関係、経歴の詳細なチェックが含まれます。これにより、安心して関係性を築くための判断材料を得ることができます。
探偵に前歴調査を依頼する際に注意点
探偵に前歴調査を依頼する際は次のような点に注意しましょう。
- 信頼できる探偵を選ぶ
- 調査範囲と目的を明確にする
- 費用と契約内容を確認する
- プライバシーと法的な配慮
- 調査期間とスケジュールを確認する
- 調査結果の活用方法を考える
信頼できる探偵を選ぶ
探偵によっては許可を受けていない違法な業者や、誇大広告を行う業者も存在します。依頼前に、探偵が公安委員会からの正式な認可を受けているかを確認しましょう。また、過去の調査実績や利用者からの口コミ、評判を調べることで、信頼性を判断する材料となります。
これまで行政処分を受けていないかもチェックポイントです。行政処分を受けた業者の場合、依頼によって何かしらのトラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。
調査範囲と目的を明確にする
探偵に前歴調査を依頼する場合、具体的な調査内容や目的を明確に伝えることで、探偵は最適な調査プランを立てることができます。漠然とした依頼では、時間や費用が無駄になる可能性があります。例えば、特定の期間の行動履歴を知りたいのか、過去の特定の事件への関与を調べたいのかなど、具体的な要望を詳細に伝えましょう。
費用と契約内容を確認する
探偵に依頼した際の調査費用は、内容や期間、難易度によって大きく変動します。事前に詳細な見積もりを取得し、費用の内訳や支払い条件、追加料金の発生条件などを確認しておきましょう。また、契約書には重要な事項が記載されているため、細部まで目を通すことが重要です。不明点や疑問点は担当者に質問して解消しておくことが重要です。
プライバシーと法的な配慮
調査で得た情報は、慎重に取り扱う必要があります。個人情報の漏洩や不適切な利用は法律で厳しく制限されています。探偵と情報の取り扱いに関する取り決めをしっかり行い、守秘義務契約を締結することで、法的なトラブルを防ぐことができます。自分自身も情報を第三者に漏らさないよう注意が必要です。
個人情報は外部先も含めて入念な管理が求められる
前歴調査で調査する内容は重要な個人情報です。このように重要な個人情報は個人情報保護法に従った厳重な管理が求められます。個人情報の取扱いに注意すべきなのは、探偵だけではありません。調査を依頼した会社も同様です。個人情報を適切に取り扱い、漏えいを防ぐ必要があります。
さらに、前歴調査の委託先ともいえる探偵が、適切に個人情報を取り扱っているかを監督する必要もあります。
調査期間とスケジュールを確認する
調査の期間は、内容や対象者の状況によって異なります。緊急性が高い場合や特定の日程までに結果が必要な場合は、その旨を事前に伝えることが重要です。また、調査が長期化する可能性も考慮し、余裕を持ったスケジュールを設定しましょう。進捗状況の報告頻度や方法についても確認しておくと安心です。
調査結果の活用方法を考える
得られた調査結果をどのように活用するかを事前に計画しておくことで、次の行動をスムーズに進めることができます。情報をもとにビジネスパートナーとしての適性を判断するのか、法的措置を検討するのか、あるいは個人の関係性を見直すのかなど、目的に応じて適切な対応策を準備しましょう。
探偵に前歴調査を依頼する流れ
探偵に前歴調査を依頼する流れは一般的に次のとおりです。
- 相談と見積もりの依頼
- 契約の締結
- 調査の実施
- 調査結果の報告
- アフターフォローと対応策の検討
相談と見積もりの依頼
信頼できる探偵を選んだら、電話やメールで初回相談を行います。この際、調査の目的や対象者の基本情報、知りたい内容などを具体的に伝えることで、調査の可否や必要な手段、概算の費用を提示します。
契約の締結
正式な契約を結ぶには、見積もりや調査内法への納得が欠かせません。契約書には、調査の範囲、期間、費用、守秘義務などが明記されます。不明点や疑問点があれば契約前に必ず確認し、納得したうえで署名しましょう。
調査の実施
契約を結んだら、探偵は計画に基づいて調査を開始します。調査期間中は、進捗状況の報告を受けることができますが、調査の性質上、詳細な内容は調査終了後にまとめて報告されるケースもあります。
調査結果の報告
探偵による調査が完了すると、報告書が提出されます。報告書には、調査で得られた情報が詳細に記載されており、必要に応じて写真や資料が添付されます。報告内容について疑問がある場合は担当者に質問し、解消しておきましょう。
アフターフォローと対応策の検討
調査結果をもとに、今後の対応策を検討できます。探偵によっては、法的手段を検討する際のアドバイスや、専門の弁護士を紹介してくれる場合もあります。必要なサポートを受けることで、次のステップにすぐ進めるでしょう。
前歴を調査した悩みを解消しよう
前科とは、刑事裁判において有罪判決を受け、法的な刑罰を科された経歴を指します。このような前科や前歴は素行調査として調査可能です。素行調査は報道機関の情報やネット検索、聞き込みによって実施できます。
しかし、対象者の個人情報を取り扱ううえに、専門的な知識がなければ有力な情報にたどり着けません。そのため、探偵に調査を依頼するのがおすすめです。
探偵に調査を依頼することで、本来の業務に注力できる、独自のルートからの情報を収集できるなどのメリットがあります。探偵の調査範囲や目的などを明確にしたうえで、調査を依頼しましょう。
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