文部科学省の発表によれば令和4年度の小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数が約68万2,000件と過去最多を記録しました。(※1)子供のいじめは増加傾向にあるうえに、SNSやインターネットなど学校外でのいじめも繰り広げられています。
このような状況においていじめの証拠を集めるのは困難でしょう。いじめの証拠を集められないと、学校や加害者に対するその後の対応が難しくなる可能性があります。
この記事では子供のいじめで証拠集めが必要な理由や証拠を集めた後の対応などを解説します。
(※1)文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00004.htm
いじめで証拠集めが必要な理由
子供がいじめられていた場合、いじめの証拠がなければ学校は加害者に的確な注意ができません。そのため、学校に的確な対応を求めるのであれば、いじめの証拠が必要になります。また、証拠はいじめに対する損害賠償請求においても重要な役割を果たします。損害賠償のように法的な責任をいじめた相手や学校に求める場合、証拠がなければ訴えが認められない可能性があります。
いじめの証拠になる6つのもの
子供がいじめられた際、証拠になるのは主に次のようなものです。
- 写真や動画
- 音声データ
- 子供の日記
- いじめで壊された物
- 友人の証言
- 診断書
ここでは6つの証拠について詳しく解説します。
写真や動画
いじめの証拠として挙げられるのが写真や動画です。いじめの現場を捉えた写真や動画は高い証拠能力が期待できます。いじめの現場を写真や動画で撮影する方法は主に次の2つです。
- いじめられた子供本人が撮影する
- 友人が撮影する
いずれの方法であっても、いじめている相手の姿を克明に捉えることが大切です。
SNSなどでの誹謗中傷も証拠として押さえておく
いじめは対面で行われるだけではありません。SNSやインターネットの掲示板などに、誹謗中傷を書かれるいじめもあります。文部科学省『令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果』によれば、インターネットでのいじめは約2万4,000件で、前年よりも4,000件増加しました。(※2)
SNSやインターネットのいじめは、外部から状況が把握しづらい傾向にあるため、より証拠が必要です。SNSやインターネット上でのいじめの証拠を集めるには、スクリーンショットを活用しましょう。該当の書き込みが削除される可能性があるため、早めにスクリーンショットで押さえておくことが大切です。
(※2)文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた緊急対策等について(通知)」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/higai/dv/kiseho.html
音声データ
写真や動画と同じく、音声データもいじめの証拠として機能します。音声データを証拠とするためには、スマートフォンやICレコーダーを活用しましょう。なお、音声データは全体の話の一部だけを切り取っているケースでは、証拠として認められない可能性があります。
子供の日記
いじめの被害に遭っている子供が日記を付けているケースがあります。このような子供の日記もいじめの証拠として認められます。特にいじめの様子が詳細に書かれている、客観的な証拠とズレていないといった場合、いじめられている本人が書いた日記であっても証拠として認められるでしょう。
いじめで壊された物
いじめで壊された物がある場合、証拠として活用できる可能性があります。例えば物損についての損害賠償を請求する際は、壊された物が証拠として機能します。いじめで壊された物をそのまま保管しておく、もしくは壊れた様子を写真や動画に収めておくことで証拠として期待できるでしょう。
友人の証言
友人の証言もいじめの証拠として機能します。友人からどのようないじめがあったのか、目撃した内容を証言してもらいます。
友人の証言もいじめの証拠として機能するものの、その後の学校生活への影響を考え、相手が証言を拒否する可能性があります。そのため、丁寧な説得を続けるか、学校に協力してもらうかといった工夫を凝らしましょう。
診断書
医師からの診断書もいじめの証拠のひとつです。例えば暴力を振るわれてケガをしたのであれば、すぐに医師に診察を受け、診断書を作成してもらいましょう。ケガから時間が経過してしまうと、いじめとの因果関係を証明しづらくなるため、いじめの証拠になりづらいでしょう。
なお、診断書は身体的なケガを負ったときに発行してもらうだけではありません。いじめによって精神を患ってしまった場合であっても、証拠として機能します。
証拠がない場合の対応
証拠を集められなかった場合でも、学校に相談することはできます。学校には生徒の安全性を確保する必要があるためです。証拠がないからといってあきらめず、まずはいじめについて学校に相談しましょう。通常であれば、何かしら行動を取ってくれるでしょう。
しかし、いじめの証拠がない場合、学校は加害者に対して具体的な指導を取りづらいでしょう。また、証拠がないと、加害者に対して損害賠償を請求するのも困難です。
証拠を集めた後の対応
子供のいじめの証拠を集めたら、次のような対応を取っていくのが一般的です。
- 学校・加害者からヒアリングを実施する
- 学校・加害者と示談を交渉する
- 損害賠償を請求する
- 刑事告訴をする
学校・加害者からヒアリングを実施する
子供のいじめの証拠を集めたら、学校や加害者へのヒアリングを実施しましょう。証拠をもとに学校側がどのように事実を把握していたのか、どのように対処する方針だったのかなどを学校側に確認します。
同様に、加害者へのヒアリングも欠かせません。加害者の言い分を聞く際も、証拠は欠かせません。ヒアリングの際、学校や加害者が事実を隠そうする可能性がありますが、証拠を持っていれば隠ぺいを指摘できます。
なお、学校や加害者の隠ぺいが疑われる場合は、弁護士のサポートが有効です。弁護士を通じてヒアリングを申し込めば、隠ぺいのリスクを軽減できます。
学校・加害者と示談を交渉する
学校や加害者との示談でも証拠は機能します。いじめをした加害者はもちろんのこと、学校も損害賠償責任を負う必要があります。一般的に損害賠償責任を追及する場合、すぐに訴訟を起こすわけではありません。示談で損害賠償を請求することが一般的です。
示談交渉にあたっては、いじめの証拠は大きな役目を果たします。いじめの証拠を持っていれば交渉を有利に進められるでしょう。また、示談交渉であれば、裁判を待つよりもスピーディに損害賠償を受け取ることが可能です。
示談交渉を進める際は次のようなポイントを押さえておきましょう。
- 学校の対応は公立か私立かによって異なる
- 示談を拒否されるケースもある
学校の対応は公立か私立かによって異なる
学校の対応は公立か私立かによって異なります。損害賠償を税金でまかなう公立学校の場合、議会承認や首長の承認、教育委員会への報告などが必要なため、対応が遅れるケースがあります。
いじめを受けた子供が公立学校に通っているのであれば、少しでも遅れを防ぐために回答期限を設けましょう。
一方、私立学校の場合、保険会社の担当者や弁護士が窓口となるケースがあります。
示談を拒否されるケースもある
いじめ加害者に対して損害賠償を請求した場合、示談を拒否されるケースもあります。一般的に子供のいじめ加害者は未成年であるため、損害賠償を支払うのは保護者です。しかし、保護者によっては次のようなケースで示談を拒否することもあります。
- 内容証明郵便を送っても無視をする
- 謝罪もないうえに支払いを拒否する
- 謝罪するもののお金がない
上記のようなケースで示談を拒否された場合、訴訟を起こす旨を伝えてみましょう。訴訟という言葉を聞いた途端、態度を一変する可能性があります。
損害賠償を請求する
示談交渉がまとまらなかった場合、損害賠償請求のための裁判を起こします。加害者、学校それぞれに、次のような理由から損害賠償責任を負う義務があります。
- 加害者:被害者に対して不法行為に基づく損害賠償責任があるため
- 学校:いじめを防ぐための必要な配慮を怠り、債務不履行もしくは不法行為に基づく損害賠償を負うため
損害賠償を請求するためには、加害者のいじめによってどのような損害が生じたかを示す必要があります。そのため、証拠が大きな働きをします。一方、学校に対して損害賠償を請求するのであれば、証拠などによっての注意義務違反を立証する必要があります。
刑事告訴をする
いじめの加害者に対して、強い処罰感情を抱いているのであれば刑事告訴も検討しましょう。具体的には次のような行為に対して刑事告訴が可能です。(※3)
いじめの内容 | 罪 | 罰則 |
---|---|---|
暴力をふるわれた | 暴行罪 | 2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、拘留、 科料(1,000円以上1万円未満)[1] |
傷害罪 | 15年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金[2] | |
誹謗中傷をされた | 名誉毀損罪 | 3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金[3] |
侮辱罪 | 1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料[4] | |
お金を盗まれた | 窃盗罪 | 10年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金[5] |
脅されてお金を取られた | 恐喝罪 | 10年以下の懲役[6] |
物を壊された | 器物損壊罪 | 3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料[7] |
刑事告訴は加害者のみで学校には行なえません。しかし、担任の教師などがいじめに加わっているのであれば、証拠で立証することで刑事告訴は可能です。
加害者に対しての刑事告訴は可能なものの、加害者が14歳未満の場合は刑事責任を問えません。刑事罰は適用されず、家庭裁判所などで保護処分が検討されることが一般的です。
(※3)e-GoV法令検索「刑法」第二百八条(暴行)[1],第二百四条(強盗致死傷)[2],第二百三十条(名誉毀き損)[3],第二百三十一条(侮辱)[4],第二百三十五条(窃盗)[5],第二百二十二条(脅迫)[6],第二百六十一条(器物損壊等)[7]
探偵へのいじめ調査依頼も効果的
子供がいじめられている場合、証拠は損害賠償請求や刑事告訴をする際に欠かせません。しかし、子供本人や親がいじめの実態を調査するのは困難でしょう。そこでおすすめなのが探偵へのいじめ調査依頼です。
ここでは探偵へいじめ調査を依頼するメリットや具体的な手法、注意点を解説します。
探偵にいじめ調査を依頼するメリット
探偵にいじめ調査を依頼するメリットは主に次のとおりです。
- 学校外の様子を把握できる
- 証拠を確実に収集できる
- 親のストレスを軽減できる
学校外の様子を把握できる
探偵事務所にいじめ調査を依頼する大きなメリットの一つが、学校外の様子も把握できるという点です。子供に対するいじめは学校内で行なわれているとは限りません。学校内でのいじめは教員の目に留まることが多いですが、学校外、例えば通学路や休日の活動時にいじめが行われている場合、保護者や学校がその状況を把握することは非常に難しいです。
探偵は尾行や張り込みといった調査手法を用いるため、学校外での行動を確認し、いじめが行われているかを明らかにします 。
確実な証拠を収集できる
探偵にいじめ調査を依頼すれば、いじめを証明できる証拠を高い確率で収集できるでしょう。先述のとおり、いじめを訴えるには、具体的な証拠が必要となります。特に、学校や警察など第三者機関にいじめの現状を訴えるには、口頭だけでは動いてもらえないことが多々あります。
探偵は写真や映像など、客観的かつ確実な証拠を収集することが可能です。この証拠があれば、学校や警察も動きやすく、問題の解決に向けてスムーズに進展することが期待できます。
親自身がいじめの証拠を収集することも不可能ではありません。しかし、加害者にバレないよう周囲を調査し、いじめの証拠を手に入れるのは非常に困難です。もし調査をしていることが加害者にバレてしまった場合、証拠の隠滅を図られてしまう可能性があります。また、加害者の警戒心が強まり、証拠の収集が難しくなるでしょう。
子供への影響なども考えると、調査のプロである探偵への依頼がおすすめです。
親のストレスを軽減できる
先述のとおり親自身が子供のいじめの実態を把握することは困難でしょう。さらに、親自身が子供のいじめを把握しようとすると、不安やストレスが溜まってしまいます。
一方、探偵に調査を依頼することで、プロフェッショナルによる正確な情報が提供されるため、親として冷静な判断がしやすくなります。
探偵が実施するいじめ調査の具体的な手法
探偵はいじめ調査を実施する際、次のような手法を用います。
- 尾行と張り込み
- 関係者から聞き取り調査
尾行と張り込み
探偵の調査手法として、最も一般的なものが尾行と張り込みです。この手法は、いじめが行われている現場を把握するために有効で、特に学校外での行動を確認するのに適しています。いじめの加害者やその仲間たちの行動を監視することで、どのような形でいじめが行われているのかを具体的に確認します 。
関係者からの聞き取り調査
探偵はいじめの目撃者や関係者からの聞き取り調査を行うこともあります。これは、学校内での出来事や、保護者が把握していない事実を明らかにするための重要な手段です。証拠と照らし合わせることで、調査の信頼性が高まります。
探偵にいじめ調査を依頼する際の注意点
探偵にいじめ調査を依頼する際は次のような点に注意しましょう。
- 調査には一定の費用がかかる
- いじめ調査を特異としている探偵に依頼する
調査には一定の費用がかかる
親自身がいじめの実態を調査する場合、証拠を集めるのは難しい一方、費用を抑えられます。対して探偵にいじめ調査を依頼した場合、一定の費用が発生します。探偵による調査は一般的に、数日から数週間にわたり行われ、それに応じた費用が発生します。料金は調査内容や期間により異なるため、事前に詳細な見積もりを確認することが重要です。
いじめ調査を得意としている探偵に依頼する
探偵には、それぞれ得意分野や調査の手法に違いがあります。いじめ調査を依頼する際には、いじめ調査を得意としている探偵を選ぶことが大切です。特にいじめ調査は探偵によっては対応していない可能性があります。依頼にあたっては口コミや実績を調べ、適切な調査を行ってくれる業者を選びましょう。
子供のいじめは探偵に依頼して証拠を集めよう
子供が学校などでいじめられている場合、証拠を集めることが大切です。証拠を入手できれば学校は適切な調査を進めてくれます。また、加害者や学校に対して責任を問う場合であっても、証拠が欠かせません。証拠がなければ損害賠償が認められない可能性もあります。
子供のいじめ調査は個人でも実施可能ですが、証拠を集められない恐れがあります。そのため、探偵に依頼して証拠を収集しましょう。
アイヴィ・サービスでは子供に内緒でいじめ調査が可能です。子供の心情や個人情報に配慮して慎重に調査を進めていきます。いじめ調査を検討している方はぜひご相談ください。