人からお金を奪い取る詐欺にはさまざまな方法があります。なかでも異性の好意を利用してお金を騙し取ろうとするのが結婚詐欺です。結婚詐欺の被害に遭ってしまうと、騙し取られたお金を回収するのは難しくなってしまいます。そのため、結婚詐欺師が姿をくらます前に証拠を押さえて返金につなげましょう。
この記事では結婚詐欺の概要やテクニック、手口などを解説します。
結婚詐欺とは
結婚詐欺とは結婚を理由にした詐欺です。具体的には、その気がないにも関わらず結婚を理由に異性に近づき、財産を奪い取ろうとする詐欺です。
結婚詐欺を行おうとする詐欺師は性別に関係なく存在します。例えば男性の結婚詐欺師の場合、金銭的に余裕がある様子、社会的地位がある様子を演出して相手に近づきます。その後、さまざまな理由をつけて財産を奪い取ろうとします。
一方、女性の結婚詐欺師はお金がないことを装い、男性から金銭を受け取ろうとします。男性、女性どちらの結婚詐欺師であっても、財産を奪い取ったら音信不通になるのが一般的です。
デート商法との違い
結婚詐欺に似た詐欺の手法としてデート商法が挙げられます。デート商法は相手の恋愛感情を利用して、商品の購入や契約につなげようとする詐欺の手口です。
デート商法はSNSやマッチングアプリを通じて知り合うのが一般的です。結婚詐欺の目的は商品購入や契約が目的で、結婚詐欺とは異なります。しかし、相手の恋愛感情を利用するという点では同じと言えるでしょう。
恋愛詐欺との違い
結婚詐欺のように、相手の恋愛感情に付け込んで金銭を得ようとする詐欺です。恋愛詐欺と結婚詐欺の違いは結婚を意識させるかどうかという点です。しかし、両者を明確に分ける定義はありません。どちらも詐欺の手口であるという点は同じです。
恋愛詐欺の代表例として挙げられるのがロマンス詐欺です。ロマンス詐欺とは、SNSなどを通じて知り合った外国人から金銭を取られてしまう詐欺です。被害者は外国人から好意を寄せられたと信じて財産を渡してしまいます。
警察庁の発表によれば2022年12月のロマンス詐欺被害件数は170件、被害額は24.6億円と過去最多になっています。ロマンス詐欺の被害に遭う年齢は、次のとおり性別によって異なります。
性別 | 10代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代 | 80代 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 0.4% | 5.8% | 10.1% | 18.5% | 31.1% | 25.1% | 8.3% | 0.8% |
女性 | – | 5.0% | 14.6% | 31.1% | 29.9% | 15.4% | 3.7% | 0.2% |
男性、女性ともに40代~50代に被害者が集中していることがわかります。
警察庁:SNS型投資・ロマンス詐欺の被害発生状況等について
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/sns-romance/sns-romance20240311.pdf P3
結婚詐欺師が使う4つのテクニック
結婚詐欺師が使うテクニックとして以下の4つが挙げられます。
- 相手の理想像を演じる
- 個人情報は隠す
- お金をせびるまで頻繁に会う
- 運命を装う
上記のような出会いで知り合った異性がいるのであれば、結婚詐欺を疑ってみましょう。
1. 相手の理想像を演じる
結婚詐欺師は相手の理想像を演じることで財産を搾取しようとします。例えば結婚詐欺師は婚活パーティやマッチングアプリなどを通じて、ターゲットの理想の異性を演じながら目の前に現れます。
職業や住んでいる場所など、ハイスペックなキャリアを装っているのが結婚詐欺師の特徴です。相手にとって理想の異性として言葉巧みに近づいて、すぐに交際を申し込もうとします。相手が理想的では思わず交際を承諾してしまうでしょう。
理想的な異性はいないという冷静さを持っておく
結婚詐欺師が装う理想的な異性に出会った場合、ついつい舞い上がってしまうかもしれません。舞い上がってしまい、そのときの感情で結婚詐欺師に近づいてしまうと被害に遭いかねません。そのため、理想的な異性がいないという冷静さを持っておきましょう。
例えばお金を持っているなら結婚詐欺師ではないと思うかもしれません。しかし、結婚詐欺師であっても多少の財産はあります。そのため、お金を持っているから結婚詐欺師ではないと判断するのは危険です。
2. 個人情報は隠す
結婚詐欺師は個人情報を隠すのが特徴です。結婚詐欺師に関わらず、詐欺師は自分の情報を隠そうとします。もし詐欺であることが被害者に気付かれた場合、警察に被害届を出されてしまうでしょう。詐欺師はこのような万が一の事態に備えて個人情報を隠して、自分に捜査が及ばないようにします。
たとえ住所や電話番号を教えてくれたとしても「近々引っ越しをする」「ビジネスでも使っている携帯電話だから」といったように、相手が訪問や電話しづらい言い訳をしてきます。
結婚詐欺師の素性はインターネットで検索する
結婚詐欺師は自分の素性を隠そうとします。不審に思う点があれば、インターネットで検索してみましょう。インターネットで名前を検索すると、相手の素性が分かるかもしれません。
なかには詐欺師の情報を共有しているサイトが引っかかる可能性もあります。
3. お金をせびるまで頻繁に会う
結婚詐欺師は一般的に、すぐにお金や財産を被害者にせびるわけではありません。最初のうちは普通の恋人のように会います。熱心に相手を想っていることをアピールするために、頻繁に会おうとするでしょう。これは好意を演出するだけの行為ではありません。
頻繁に会うことで被害者は友人や家族と会うスケジュールがなくなります。友人や家族と会う機会が少なくなった被害者は結婚詐欺師を第一優先するようになり、後々誰かに相談することも難しくなってしまいます。
万が一に備えてデートの様子を撮影しておく
出会った相手が結婚詐欺師であった場合に備えるという点でも、デートの様子は写真や動画で撮影しておきましょう。
写真や動画で撮影しておけば万が一、結婚詐欺の被害に遭った際にも証拠として活用できます。
4. 運命を装う
運命を装うのも結婚詐欺師の特徴です。理想の異性と突然出会ったことで被害者は運命を感じてしまうでしょう。運命の出会いを装うことで被害者を信じさせて徐々に財産を奪っていこうとします。
結婚詐欺師の手口
結婚詐欺師の手口は次のような順番で進んでいきます。
- 好意があるふりをして近づく
- 結婚を意識させる
- 理由をつけてお金を借りる
- お金を借りたら姿を消す
結婚詐欺はどのようなケースであってもお金を借りたら姿を消すのが一般的です。姿を消されてしまうと探し出すのが難しくなってしまうでしょう。
好意があるふりをして近づく
結婚詐欺師は好意のあるふりをして被害者に近づいてきます。例えば結婚に焦っているときや気持ちが落ち込んでいるときなどに、理想的な異性に遭遇してしまうと運命と思ってしまうかもしれません。
好意を寄せられることが分かれば、一気に交際に発展してしまう可能性があります。
結婚を意識させる
結婚詐欺師は被害者に接近した後に結婚を意識させます。例えば将来の話をする、結婚式場を見に行くなどの結婚を匂わせる方法で結婚を意識させます。
結婚を意識させるころには、被害者は結婚詐欺師に依存してしまっている状態になっているでしょう。
理由をつけてお金を借りる
結婚詐欺師は何度もデートを重ね、結婚を意識させた後に理由をつけてお金を借りようとします。
結婚詐欺師がお金を借りるために使う嘘はさまざまです。例えば次のような理由をつけてお金を借りようとします。
- 難病のためお金を貸してほしい
- 借金があるからお金を貸してほしい
- 事業が大変だからお金を貸してほしい
難病や借金を抱えているのが詐欺師本人とは限りません。家族が難病、借金があることを理由にお金を借りようとするケースもあるでしょう。
結婚詐欺師がお金を借りるのは一回だけではありません。「〇〇までに返す」と言って何度もお金を借りようとします。結婚を約束している相手を助けたいと被害者はついついお金を貸してしまうでしょう。
最初のうちは少額ながらお金を返してくれます。そのため、いずれは返ってくるだろうと思うでしょう。しかし、お金が全額返ってくることはありません。
結婚詐欺師が借用書を用意してくるケースがある
結婚詐欺師がお金を借りようとする場合、あえて借用書を用意するケースがあります。借用書を用意しておけば相手は安心するでしょう。そのため、なかにはあえて借用書を用意する結婚詐欺師もいます。
借用書にサインしておけば、返す意思があることをアピール可能です。詐欺罪は返す意思がある場合、成立が難しいためあえて借用書を用意するのです。
お金を借りたら姿を消す
結婚詐欺師はお金を借りたら姿を消してしまいます。使用していた携帯電話に電話しても通じない、住所とされる場所に行っても住んでいないでしょう。
また、勤務していると言われた会社に電話しても退職している、そもそも在籍していないという状態です。
姿を消されても事件性がなければ警察は動かない
結婚詐欺師にお金を取られ姿を消されてしまっても、事件性がなければ警察は動きません。特に詐欺は相手が返す意図がなかったことを証明できなければ、警察が捜査をしない可能性があります。
【男女別】結婚詐欺師に騙される人の特徴
結婚詐欺師に騙される人は男女共通な特徴もあれば、男女で異なる特徴もあります。ここでは男女共通の特徴、男女別の特徴を解説します。
男女共通の特徴
男女共通で結婚詐欺師に騙されやすい人の特徴は次のとおりです。
- 恋愛経験が少ない
- 言い寄られると断れない
- 交友関係が狭い
- 自分に自信がない
- 感情的になりやすい
恋愛経験が少ない
恋愛経験が少ないと結婚詐欺師が演じる理想的な異性像に騙されやすいでしょう。
さまざまな恋愛経験を重ねていれば、完全に理想的な異性は現れないと考えられるかもしれません。しかし、恋愛経験が少ないと結婚詐欺師が演じる理想的な異性を真に受けてしまい騙される可能性があるでしょう。
言い寄られると断れない
言い寄られると断れないという人も結婚詐欺に騙されやすいでしょう。結婚詐欺師に交際を言い寄られても断われない、金銭を要求されたとしても断れないといったようにズルズルと関係が続いてしまいます。
言い寄られても断れないという人はお金を返して欲しいとも言い出せない可能性があるでしょう。
交友関係が狭い
交友関係が狭い人も結婚詐欺師に狙われやすい傾向にあります。
相談する相手が多ければ、なかには結婚詐欺を疑う意見も出てくるでしょう。しかし交友関係が狭い人の場合、結婚詐欺かどうかを判断する機会が少なく、騙されていることに気付かない可能性があります。
自分に自信がない
結婚詐欺師は相手を褒めるのが得意です。そのため、自分に自信がない人の場合、相手から褒められたことでつい気を許してしまうでしょう。
その結果、多少の違和感を感じてもついついお金を渡してしまう可能性があります。
感情的になりやすい
感情的になりやすい人も結婚詐欺の被害に遭う可能性があります。
例えば周囲に相談をした際、結婚詐欺を疑う声があがることがあるでしょう。結婚詐欺を疑う声があがったとしても、感情的になりやすい人は周囲の意見を聞かなくなってしまいます。結果、周囲と疎遠になるだけでなく、結婚詐欺師との関係が強まってしまう可能性があるでしょう。
男性の特徴
ロマンス詐欺の場合、男性のなかでも特に50代が被害に遭いやすい傾向にあります。
ほかにも次のような特徴を持つ男性は結婚詐欺師に騙されてしまうかもしれません。
- 情に流されやすい
- 金銭的な余裕がある
警察庁:SNS型投資・ロマンス詐欺の被害発生状況等について
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/sns-romance/sns-romance20240311.pdf P6
情に流されやすい
男性をターゲットにする女性結婚詐欺師は、相手の情に訴えてくる傾向にあります。そのため、情に流されやすく、自分がなんとかしてあげたいと思う男性は騙されてしまう可能性があります。
金銭的な余裕がある
結婚詐欺師は被害者からお金を取ることが目的です。そのため、金銭的な余裕がある男性は結婚詐欺師に騙される可能性が高いでしょう。特に大企業に勤める男性は注意が必要です。
厚生労働省の発表によれば、企業規模によって次のとおり月収が異なります。
年齢 | 大企業 | 中企業 | 小企業 |
---|---|---|---|
40~44歳 | 41万1,900円 | 35万2,400円 | 32万6,600円 |
45~49歳 | 44万7,800円 | 37万4,900円 | 34万1,100円 |
50~54歳 | 48万6,000円 | 39万6,900円 | 34万9,100円 |
55~59歳 | 42万7,000円 | 36万4,300円 | 31万8,300円 |
厚生労働省:令和4年賃金構造基本統計調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/dl/13.pdf P11
上記のように大企業の40代から50代の男性は、中小企業の同年代よりも収入が高い傾向にあります。
40代から50代となると、社内でも重要な役職に就いていることもあるでしょう。重要な役職に就いている場合、会社ホームページなどに名前が掲載されるケースがあります。結婚詐欺師がホームページに掲載された情報をもとに言い寄ってくる可能性もあるでしょう。
女性の特徴
結婚詐欺師に騙されてしまう女性の特徴は次のとおりです。
- 社会的な地位を得ている女性
- 結婚を急いでいる女性
- ステータスで結婚相手を選ぼうとする
男性の場合、ロマンス詐欺の被害に遭いやすい年齢は50代ですが、女性の場合は40代が多くなっています。
警察庁:SNS型投資・ロマンス詐欺の被害発生状況等について
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/sns-romance/sns-romance20240311.pdf P6
社会的な地位を得ている女性
女性のなかでも、仕事に熱を上げてきた女性が結婚詐欺師の被害に遭いやすいとされています。仕事に時間を費やしてきた結果、恋愛から離れていたため、運命の相手を装った結婚詐欺師に騙されてしまいます。
結婚を急いでいる女性
周囲が結婚したことで、結婚を急いでいる女性も結婚詐欺の被害に遭いやすい傾向にあります。結婚を急ぐあまり結婚詐欺師の嘘を判断しづらくなり、お金を無心されていることに気付かずに騙されてしまうでしょう。
ステータスで結婚相手を選ぼうとする
ステータスで結婚相手を選ぼうとする女性も結婚詐欺の被害に遭いかねません。
結婚詐欺師は収入や住んでいる場所など、ステータスを理想的に見せます。そのため、ステータスで結婚相手を選ぼうとすると、結婚詐欺師に騙されてしまう恐れがあります。
結婚詐欺のテクニックを把握して騙されないようにしよう
結婚詐欺師は相手の理想像を演じる、個人情報を隠す、お金をせびるまで頻繁に会うなどのテクニックを使って相手から財産を奪おうとします。結婚詐欺師は頻繁に会った後に理由をつけてお金を借ります。お金を可能な限り借りたらそのまま姿を消してしまうため、探し出すことは難しいでしょう。
結婚詐欺師に騙されやすいのは男女ともに恋愛経験が少ない、交友関係が狭いといった人です。結婚詐欺の被害に遭わないためには相手の素性を調査しましょう。
アイヴィ・サービスは結婚詐欺についての調査を受け付けています。結婚詐欺師が既婚者だったというケースもあるため、浮気調査によって相手の行動や素性を調査しましょう。